日本の職場トレンドについて調べている中で、最近、思わず目を留めてしまうような調査結果に出会いました。パーソル総合研究所による調査です。
この調査によると、「働くことを通じた成長」を重要だと感じる若手社員は、数年前と比べて減少しているという結果が出ています。同時に、業務外での学習・自己啓発活動について「とくに何も行っていない」と答える人の割合も増加しています。一方で、40代以上の社員にはこうした変化は見られないとのことです。
私が特に気になったのは、若手社員たちが「成長」という言葉の意味そのものを、見直し始めているように見えるという点です。
調査によると、若手社員は「成長」を、報酬の上昇や効率性の向上、専門性の向上、チームでの協働力や部下指導力の向上、成績・評価を得ること、視野の拡大といった従来型の成果と結びつけて考える傾向が弱まっているそうです。一方で、「キャリアの明確化」への関心は、比較的安定して推移しています。
以前、新卒社員向けの育成プログラムを担当していた頃、参加者たちには、上司や人事、部門長を「自分のキャリアを支えてくれるチーム」として捉えるよう伝えていました。目的は、彼らが自分の希望を話し合い、可能性を探り、組織内にどのような機会があるのかをより深く理解できるよう支援することでした。
ある時、管理職向けの会議で、今でも忘れられない質問を受けたことがあります。
「もし社員の目標が、この会社を辞めることだったら、どうすればいいのでしょうか」。その場では、皆さんの考えを聞きたいと思い、その質問をそのまま参加者へ返しました。
会議室は、しばらく静まり返りました。
人材育成の仕事を長く続けるうちに、キャリア開発は組織と個人が共に担うものだという思いが、私の中でますます強くなっていきました。組織は機会や支援、コーチング、経験の場を提供します。そして社員自身も、自分がどこへ向かいたいのか、そしてそこへどう辿り着くのかを、自ら考えていく必要があります。
振り返ってみると、私が関わってきた若手社員の多くは、どうすれば早く管理職になれるか、どうすれば出世できるかを尋ねていたわけではありませんでした。彼らが求めていたのは、自分がどこへ向かっているのか、そして今の仕事が将来の機会にどうつながっているのかを、もっとはっきりと理解することでした。
パーソルの調査結果が興味深いのは、まさにこの点にあるのかもしれません。
若手社員が、組織がこれまで定義してきたような「成長」への関心を弱めているのであれば、企業が向き合うべき課題は、単に育成の機会を増やすことだけではないのかもしれません。キャリアや組織、そして成功に必要とされるスキルそのものが、かつてないスピードで変化していく時代において、「育成とは何か」を社員自身が理解できるよう、支援していくことこそが求められているのではないでしょうか。
出典 株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」)
参考分析: 金本麻里「若手社員の成長志向が低下 成長とは何かが問われる時代へ」パーソル総合研究所、2025年6月30日公開