1on1を変える!コーチング・アプローチという賢いやり方

多くの1on1ミーティングは、進捗確認や問題解決に終始しがちです。しかし、少しの工夫で、部下の成長を促す対話の場に変えることができます。コーチング的なアプローチを取り入れることで、信頼と主体性、気づきを引き出す1on1に進化させましょう。


マネージャーの重要な役割の一つは、チームを育成することです。理想としては常に指示を出すのではなく、自立したチームを育てたいものですが、時間に追われる場面では、どうしても指示型のリーダーシップに頼りがちです。この方法は短期的には成果が出やすいものの、メンバーの成長やエンゲージメントといった長期的な観点ではマイナスになることもあります。

本当に目指したいのは、チームメンバーが自らのパフォーマンスを客観的に振り返り、チームへの貢献方法を自分で見つけていける状態です。そこで役立つのが「コーチング・アプローチ」です。

この重要性を再認識したのが、私が共同開発したマネージャー向けコーチング研修の最終ロールプレイセッションでした。マネージャーたちはこれまでに学んだスキルを使って模擬的な1on1に取り組み、私はサポートを必要とするチームメンバー役を演じました。

そこで目立った2つの課題は以下の通りです:

  • 問題の根本原因に迫るオープン・クエスチョン(自由回答形式の質問)をうまく使えないこと
  • 沈黙を恐れて話を埋めてしまい、内省の時間を与えられないこと

これらの習慣により、せっかくの対話も従来型の一方的なやり取りに戻ってしまい、メンバーの主体性や気づきを引き出す機会が失われていました。

なぜ1on1にコーチングが必要か

指示を与えるばかりでは、メンバーの成長を妨げてしまいます。たとえ時々でも、コーチング的な関わり方を取り入れることで:

  • 主体性と責任感が育まれ
  • 課題解決力が高まり
  • 信頼関係とエンゲージメントが深まる

オープン・クエスチョンの力

多くのロールプレイでは、マネージャーが「はい/いいえ」で答えられる質問ばかりをしてしまい、私(メンバー役)は深く話すことができませんでした。オープン・クエスチョンを使うと、内省を促し、より有意義な対話につながります。

コーチングの代表的な手法の一つに「5回掘り下げる(Ask Five Times)」というものがあります。最初の質問に続けて、さらに4回ほどフォローアップ質問を行うことで、より深い背景や本音を引き出すことができます。

例:テーマ=エンゲージメント

  1. 「仕事の中で一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?」
  2. 「最近、どんなことにフラストレーションを感じていますか?」
  3. 「やる気が下がったと感じたのは、どんな時ですか?」
  4. 「やる気が下がったとき、普段どのように対応していますか?」
  5. 「もっとサポートされていると感じるには、どんな工夫が必要だと思いますか?」

質問には 「何が」「どうやって」「どのように」「どんな」「について詳しく教えてください」 のような表現が効果的です。質問の質と量を増やせば、学びも深まり、メンバーの主体性も高まります。

実体験:テーマパークのアンケート調査から学んだこと

私がキャリア初期に働いていた企業では、テーマパークの来場者にアンケートを行っていました。退園時の最終アンケートでは、特に深掘りが求められました。ところが、多くの調査員は1〜2回の質問で止めてしまい、結果として得られたデータは浅く、価値が限定的なものでした。

これはマネージャーにも当てはまります。深掘りを途中で止めてしまうと、本当に重要な情報を聞き逃してしまいます。行動には文脈があります。それを理解することが、変化を促す第一歩です。

沈黙を活かす:見落とされがちなコーチングツール

もう一つの課題は、沈黙を避ける傾向です。多くのマネージャーは、会話を止めてはいけないというプレッシャーを感じていますが、沈黙は実は非常に効果的なツールです。

相手が沈黙しているときは、無理に話さず待ってみてください。思考が深まっているサインかもしれません。頭の中で10数えてみると、内省の時間を自然に提供できます。

このような姿勢は、傾聴の姿勢を示し、信頼関係の構築にもつながります。

1on1で使えるシンプルなコーチングの6ステップ

次回の1on1で使える6つのステップを紹介します:

  1. オープン・クエスチョンで始める 「最近、[トピック]についてどう感じていますか?」
  2. 好奇心を持って掘り下げる(Ask Five Times) 「詳しく教えてもらえますか?」 「その背景にはどんなことがあると思いますか?」 (ヒント:フォローアップの質問は、相手の回答内容に基づいて組み立てましょう。)
  3. 沈黙を受け入れる 待ちましょう。途中で遮らず、相手に考える時間を与えましょう。
  4. 要約して支援する 「今のお話をまとめると、〇〇のように聞こえます。どんな対応策が考えられそうですか?」 「他に考えられるアプローチはありますか?」
  5. 次の行動・戦略を一緒に考える 「いくつかの案の中で、一番現実的だと思うのはどれですか?」 (ヒント:必要に応じて、マネージャーの視点も共有しながら現実的な方向性を探ります。)
  6. アクションプランを確認する 「次回の1on1までに実行することを、もう一度確認させてください。」

まとめ:マネージャーからコーチへ

コーチングスキルを使うのに、資格は必要ありません。少しだけ質問の仕方を工夫し、沈黙を活かし、深掘りするだけで、マネジメントは大きく変わります。

次の1on1では、ぜひこれらのうち1つか2つを実践してみてください。いつもより1つ多く質問をして、少しだけ長く沈黙してみてください。驚くような発見があるかもしれません。

あなたはどう思いますか?

1on1でコーチング的な関わりを試したことはありますか? うまくいったこと、難しかったことがあれば、ぜひ教えてください。

そして、リーダーシップの効果を高めたい方、またはアサーティブ・コミュニケーションのスキルを向上させたい方は、 こちらまでご連絡ください。より効果的で、文化的な違いにも配慮できるチームづくりを一緒に目指しましょう!


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